癒し効果

先祖代々のパワーストーンを手渡され長寿を全うするように言われた私

もう子供達は大きくなり親元を離れ独立して生活し、残された私達はこれからを夫婦二人で生きていくはずでした。
私と夫はその為に健康に注意をするようになりました。
前から医者に注意を受けていた夫は、仕事が定年退職すると同時に大好きだったタバコをやめました。
夫がタバコをやめたのを見た私もこれではいけないと思い、大好きだった甘いものを控えてダイエットをすることにしました。
私達は老いゆく先々が何のその、という負けん気のある気持ちでいっぱいでした。
また私達は二人暮らしの寂しさや毎日の散歩をサポートしてくれる者が欲しくなり、犬を飼うことにしたのです。
知人から貰い受けた真っ白な子犬で、名前をチロと名付けました。
こうしてチロと私と夫の暮らしが始まったのです。
チロはわが家を明るくしてくれるばかりではなく、私と夫との間に会話も増やしてくれました。
朝陽が昇り私と夫とチロは散歩に出かけて瑞々しい空を眺め景色を眺め、ひんやりした朝の空気を肺一杯吸って帰宅します。
朝ご飯を感謝しながら夫と頂きそれが終わると食事の後片付けを二人でやります。
その後私は洗濯や掃除をし、夫は庭に出て家庭菜園の手入れをします。
お昼ご飯は交代で作り午後からは買い物をする、何気ない日常生活ですが、私にとってはかけがえのない時間だったのです。
あの黄金色の時間、私は今ではそう呼んでいます。
もう戻っては来ない過去の時間、私はこの時は全くそんなに貴重な時間だということに気づきませんでした。
毎年の定期健診で夫に不治の病が発見されてから、私達の生活は一変します。
どんなに冷静に受け止めようと思っても、そんなことは嘘だと私の心が叫びます。
医者や看護士に何度も説明を受けますが、私は言いようのない怒りが噴き出てきます。
本当なら一番ショックを受けている夫を黙って支えるのが私の役目かもしれませんが、恥ずかしながら私はそうではありませんでした。
私はだんだんふさぎ込むようになっていったのです。
夫はそんな私を心配してか、ある時私を呼んで小さな包みをくれたのです。
それは美しいパワーストーンのブレスレットでした。
私は思わず、どうしてこれを私にくれるのと夫に聞いてしまいました。
夫は落ち着いた声で、自分がもうすぐいなくなっても元気に毎日を暮らして長生きをして欲しいと言いました。
夫が私にくれたパワーストーンのブレスレットは、実は夫の先祖からの物であったのです。
夫はそれを仏壇の奥に大切にしまって誰にも触らせませんでした。
そんな大切な物を夫は私にくれるというのです。
私は夫の覚悟を知り溢れる涙を止めることが出来ませんでした。
そして私が決心したことはどんな状況になっても、明るく元気な態度で夫と過ごしていこうということでした。
やがて夫が亡くなり悲しくて寂しい思いを感じることもある私ですが、ある程度は落ち着いていられます。
それも夫から託されたブレスレットを身に付け、夫の分も私は長寿を全うするつもりでいるからかもしれません。
かつては私と夫とチロの散歩でしたが今では毎朝、私とチロで散歩へ出かけます。
溌剌とした朝の空気を感じていると時折、夫のことを思い出して涙ぐむこともある私ですが、毎朝の散歩は続けていくつもりです。

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